TREATMENT 診療案内

次世代細胞治療への挑戦
名古屋市立大学病院が取り組むCAR-T細胞療法

「自分の免疫細胞でがんに立ち向かう最先端治療、CAR-T細胞療法」

CAR-T細胞療法は「Chimeric Antigen Receptor T-cell Therapy(キメラ抗原受容体T細胞療法)」の略です。T細胞は免疫細胞の一種で、本来、ウイルスやがん細胞を攻撃する免疫の主役です。CAR-T細胞療法は、患者さん自身のT細胞を改変して、がん細胞を選択的に攻撃できるようにする革新的な治療法です。従来の化学療法や放射線治療では難しい難治性血液がんに高い効果が期待されています。

この治療は個別化医療の一つで、患者さんご自身の細胞を使うため、体への負担を最小限に抑えつつ強力ながん攻撃が可能です。従来治療抵抗性の血液腫瘍において高い奏効率が報告されていますが、重篤な有害事象のリスクもあり、専門的な管理体制が求められます。当施設では、CAR-T細胞療法を安全に、かつ適切な体制のもとで実施しています。

CAR-T細胞療法の流れ

以下のステップで行われます。

  • T細胞を採取
    患者さんの血液から白血球分離(アフェレーシス)を行い、そのうちの単核球を集めます。単核球の中にはT細胞が含まれます。
  • 遺伝子改変
    採取したT細胞に「CAR(キメラ抗原受容体)」という人工受容体を組み込みます。この受容体は、がん細胞の表面にある特定の抗原を認識するよう設計されています。
  • 細胞を増やす
    改変したT細胞を体外で増殖させます。数十億〜数百億個に増やしてから体内に戻します。
  • 患者さんへ投与
    増やしたCAR-T細胞を患者さんに投与します。体内でがん細胞を見つけ出し、攻撃・排除します。
ポイント:
• 自分の細胞を使うので拒絶反応は少ない。
• 高い効果が期待できる一方で、サイトカイン放出症候群(CRS)や神経症状など副作用リスクもある。

当施設で施行可能なCAR-T細胞製品

  • 多発性骨髄腫(BCMA標的のCAR-T)
    多発性骨髄腫は、骨髄中の形質細胞が異常に増殖し、骨や腎臓などに障害をきたす血液がんです。再発・難治例に対しては、BCMAを標的としたCAR-T細胞療法が新たな治療選択肢となっています。
    使用可能なCAR-T製品
    • イデカブタゲン ビクルユーセル(アベクマ®)
    以下の製品は、国内薬価収載前。現在準備中
    シルタカブタゲン オートルユーセル(カービィクティ®)
  • びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)など一部の非ホジキンリンパ腫
    びまん性大細胞型B細胞リンパ腫(DLBCL)は、非ホジキンリンパ腫の中で最も頻度が高く、進行が早いタイプの悪性リンパ腫です。再発・難治例に対して、CD19を標的としたCAR-T細胞療法が有効な新しい治療選択肢として導入されています。
    使用可能なCAR-T製品
    • チサゲンレクルユーセル(キムリア®)
    • リソカブタゲン マラルユーセル(ブレヤンジ®)
    以下の製品は施設承認申請中にて、現在準備中
    アキシカブタゲン シロルユーセル(イエスカルタ®)
  • 急性リンパ性白血病(ALL)
    急性リンパ性白血病(ALL)は、骨髄中の未熟なリンパ球が制御不能に増殖する血液がんで、小児から成人まで幅広い年齢層に発症します。標準治療である化学療法や造血幹細胞移植に抵抗性を示す再発・難治例に対して、CD19を標的としたCAR-T細胞療法が有効な新しい治療選択肢となっています。
    使用可能なCAR-T製品
    • チサゲンレクルユーセル(キムリア®)

治療の流れ

  • 医師による適応評価
    当院へご紹介いただきましたら、年齢、既往歴、がんの種類・進行度などを総合的に評価し、治療の可否を判断します。適応となる場合、病勢に応じて、速やかにアフェレーシスを対応いたします。
  • 血液採取(T細胞の採取)
    数日入院していただきます。採血やアフェレーシス(血液成分分離)により単核球(必要なT細胞)を取り出します。採取したものは細胞培養加工施設(CPC)へ送ります。採取後、CAR-T細胞製品が出来上がるまで、紹介元施設で治療を継続いていただきます。
  • 細胞加工・遺伝子改変
    細胞培養加工施設(CPC)でT細胞にCARを組み込み、増殖させます。この過程は数週間かかります。増殖後、当施設へ戻されます。スケジュールが立ち次第、紹介元施設へ予定を速やかにご連絡いたします。
  • 投与前の前処置(リンパ球除去化学療法など)
    再入院していただきます。CAR-T細胞が効率よく増殖できるよう、体内の既存リンパ球を減らす処置を行います。主に、フルダラビンやシクロホスファミドが使用されます。
  • CAR-T細胞投与
    点滴で患者さんに戻します。体内でCAR-T細胞ががん細胞を攻撃します。
  • 経過観察と副作用管理
    サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性(ICANS)として、発熱、血圧低下、神経症状などの副作用が起きることがあり、入院管理が必要です。

よくある質問(FAQ)

  • 副作用は?
    サイトカイン放出症候群(CRS)や神経毒性(ICANS)の症状として、発熱、倦怠感、低血圧、神経症状(意識障害、言語障害など)が起こることがあります。医療チームが入院管理のもと対応します。投与後も、血球減少やウイルス感染などの易感染性なため、紹介元施設でこまめに経過を見ていただきます。
  • 治療はどれくらいで終わる?
    CAR-T細胞投与し、急性期の副作用がおさまったあとでもしばらく入院での経過観察が必要です。副作用が落ち着くまでの期間も含めると入院期間は1か月程度(時に2か月ほど)かかります。
  • CAR-T細胞療法後に再発した場合は?
    CAR-T細胞療法の効果は個々の患者さんの状況によって異なります。再発時には別の治療(薬物療法や二重特異性抗体薬など)が検討されます。
  • 治療対象は全ての患者に適応できますか?
    年齢や健康状態、既往症により制限があります。当院医師による評価が必須です。

お問い合わせ

「治療に関する相談・申し込み」
当院のセカンドオピニオン外来をご活用ください。
当施設でのCAR-T細胞療法に関する窓口
李 政樹 (輸血・細胞療法部 / 血液・腫瘍内科学)
TEL:052-851-5511(病院代表)

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