成熟T細胞リンパ腫の免疫病態の解明および新規免疫療法の開発
私たちは、ケモカインレセプターCCR4分子の各種成熟T細胞リンパ腫における発現頻度、生物学的・臨床的意義を明らかにしてきました。さらに企業と共同でCCR4を分子標的とする抗体療法開発の基盤研究、臨床開発研究を推し進め、それらの研究成果はCCR4抗体『モガムリズマブ』という名の抗体薬となり実際に多くの患者さんの元に届けられています。日本では欧米諸国に比較し新規抗腫瘍薬剤の承認が数年遅れ、患者さんのもとに届くのも数年遅れるのが現状です(ドラッグラグ)。そのようななか、CCR4抗体のように、悪性腫瘍患者さんを対象とした抗体薬の臨床導入が欧米諸国に先駆け本邦で行われたことは画期的な出来事でした。CCR4抗体のトランスレーショナルリサーチは、今後の日本における新規抗腫瘍薬剤の臨床開発のひとつのモデルケースになることが期待されています。
CCR4抗体『モガムリズマブ』はヒトに本来備わるADCC(抗体依存性細胞介在性細胞傷害作用)と呼ばれる免疫応答を作用機序とする抗体薬です。現在私たちはCCR4抗体の開発研究で得た豊富な経験をもとに、第2、第3のモガムリズマブを誕生させるべく、日々研究に取り組んでいます。がんは宿主からの免疫応答(攻撃)を回避するために様々な巧妙な”仕掛け”で、ヒト体内にがん細胞に有利な環境を構築しています。私たちの研究の基盤は、この”仕掛け”のメカニズムを明らかにすること(=免疫病態の解明)にあります。このことが、がん細胞に有利な環境を有効に破壊する方法の構築(新規免疫の開発)につながります。
私たちの研究の目標(goal)は、患者さんのneed にあります。すなわち、自分たちの研究結果、『何がわかったか』ではなく、『何が患者さんにもたらされたか』を常に考えながら仕事をしています。研究経験の有無は問いません。『何か患者さんの役にたつ仕事がしたい』と思っている方、是非 私たちと一緒に研究しましょう!